20代の社会保障のブログ

ニュースで見るけど難しくてよく分からない社会保障を少しだけ噛み砕いていくブログです。若者目線で綴っていきます。

骨太の方針が閣議決定されました

本日は、社会保障に限らず、国の経済・財政の方針を決める「骨太の方針」というものについて記事にしたいと思います。

 

【URL】

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/decision0609.html

 

みなさん、新聞などで、「骨太の方針」、「成長戦略」、「規制改革計画」というようなものを聞いたことはありませんか。

 

いずれも、政府が閣議決定(カクギケッテイ。今の内閣の方針を明確に文章にすること)する政府の公文書です。

ひたすらに長いので誰も読まないと思いますが、ここには「今後どのような政策を行うのか・検討するのか」ということが色々書かれているわけですね。

 

これが、本日6月9日に閣議決定されました。

 

既にニュースになって知っている方もいるかもしれませんが、明日またニュースになるのかと思います。

 

なぜこの時期にこんなことをやっているかというと、多分、各省による予算要求(こういう施策をしたいので財務省にお金をくれと要求すること)が8月にある関係なのかな、と思います。

 

これらの公文書を踏まえて、夏以降、来年度の予算をどうするのか、あるいはどのような制度改正を行うのかを検討していきます。

 

そして財務省の査定を経て、年末に国の予算案を決めるので、逆算するとこの時期になるのかなと思います。

 

その中で、今回は「骨太の方針」を紹介したいと思います。

 

これは、政府が毎年作成するもので、最も大事なものの一つです。小泉政権のときから作られてきましたが、国の経済・財政の方針を示したものです。

 

本日に閣議決定された「骨太の方針」の中には、

プライマリーバランスを2020年度までに黒字化する

・債務残高の対GDP比を下げる

といった全体の目標が書かれていますね。

 

社会保障の関係ですと、2015年の骨太の方針の記載になりますが

社会保障の予算の伸びを3年(2016年~2018年)で1.5兆円にする

といったことが盛り込まれています。

 

これは、高齢化が進展すれば当然、社会保障費が1.5兆円以上増えますので、どこかで無駄を削減して、財源をねん出しなければいけないことを明示しているのですね。

 

さて、今年の「骨太の方針」について見ていきたいと思います(社会保障のブログなので社会保障の関係に偏ります)。

 

社会保障は一般歳出の55%を占めますので、「骨太の方針」で社会保障の関係の記載は、社会保障の無駄を省き、効率化するための施策が多く書かれていますね。

 

今回注目しているところとしては、、

 

①「こども保険」も検討する

・幼児教育・保育 の早期無償化や待機児童の解消に向け、財政の効率化、税、新たな社会保険方式の活用 を含め、安定的な財源確保の進め方を検討し、年内に結論を得、高等教育を含め、社会全体で人材投資を抜本強化するための改革の在り方についても早急に検討

これは、以前記事にした、こども保険についても検討することを国が約束したということですね。今回の「骨太の方針」の柱に、教育や待機児童解消のために、財源を確保することが提起されていることかと思います。

ginoway.hatenadiary.jp

 

②薬の値段の改革を進める

・効能追加等に伴う市場拡大への対応、毎年薬価調査・薬価改定、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度のゼロベースでの抜本的見直し、費用対効果評価の本格導入などの薬価制度の抜本改革等に取り組む

・・・ちょっと、難しいのですが、今回の「骨太の方針」の社会保障の部分の記載量で薬の値段の改革はかなり多いです。

昨年記事にした、超高額な薬剤「オプジーボ」については、結局緊急的にその値段を50%引き下げるということを行いました。

さらに、今後もこのような超高額薬剤が出てきたときの対応策を検討したり、2年に1回、薬の公定価格が変わっているところ、毎年変える仕組みとしてはどうか、など多岐に渡る改革案が示されていますね。

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そして、以前紹介したジェネリック医薬品についても、以下のように、新たな目標を設定しています(今は60%くらいです)。

 

・2020 年(平成32 年)9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早 期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討

ginoway.hatenadiary.jp

 

・・・リンクを貼り付けまくってしまいました。

 

このほかにも、本当に多くのことが書かれていて、書ききれませんが、「骨太の方針」がこういうものなのか、と知っていただければ、ニュースも面白くなるのかな、と思います。

 

介護保険法の改正

本年1月から続いてきた通常国会ですが、今月半ばに会期末を迎えます。

 

話題になっているのは、共謀罪を創設する組織的犯罪処罰法や、天皇陛下の退位の特例法ですね。また、森友学園に続き加計学園の問題もしばらくは落ち着くことはなさそうです。そして、来月には都議会選挙もあったりして、国会も延長ということもありそうですね。

 

そんな中先週、介護保険の関係の法律が今国会で成立しました。社会保障の関係で今年一番の規模でもあるので、今回はその内容を記事にしたいと思います。

 

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さて、みなさん、そもそも「介護保険」自体になじみがないですよね。

 

というのも、40歳未満の人は保険料も支払っておらず、そのため介護保険の仕組みの中に入っていないからです。

 

介護保険は、年齢を重ねることで「介護」が必要になったときに、その時負担が大きくならないように社会全体でささえ合う仕組みです。

 

40歳以上になると、保険料を払わなければいけないことになっていて、そのプールした保険料が介護サービスを使う人の負担が重くならないようにペイされるという仕組みですね。

 

介護サービスとは、ヘルパーさんが家に来て掃除や洗濯をやってくれたり、デイサービスに行ったり、はたまた老人ホームに入って生活したり、という具合です。

 

僕も、祖父母も老人ホームに入っていて、時折顔を見せにいったりします。なんとなく想像がつくのではないでしょうか。

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介護保険の歴史は浅く、2000年から始まりました。それまでは介護は家族によるものが多かったり、措置制度といって行政が使えるサービスを決めていたりして、サービスは充実していませんでした。

 

それが、介護保険の創設により、

・ 介護の社会化が進んだ、高齢者の家族だけでなく、社会全体で介護が必要な人を支える仕組みになった

・ 行政が予算の範囲内でサービスを決めるのではなく、本人の希望によりサービス事業者と契約する仕組みになった(措置から契約へ)、

とか言われたりします。

 

その結果、急速に使う人が増え、今やサービスを使う人は500万人(制度創設時は150万人くらい)、サービス事業所も増え、介護費用も今や10兆円(制度創設時は3兆円くらい)になっています。

 

制度が始まってから17年くらいになのに、すごいペースですよね。

 

介護は高齢になればなるほど、使う人が増えます。

 

そのため、今後更なる高齢化が進むとこの規模はどんどん膨れ上がっていくのは明らかであって、

いわゆる団塊の世代がみんな75歳になる2025年には今より2倍くらいの規模になるとい推計されています。

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少し前置きが長くなりましたが、そんな中で今回の制度改正が行われたのですね。

 

主なコンセプトとしては、 

①今後増えていく高齢者の生活をどう支えていくのか、

②さらに、膨れていく介護費用にどう対応するのか、

ということだったかと思います。 

 

 

高齢者の生活を支える、という観点からは例えば、

 

✔ 介護となることを予防したり、介護が重度化することを防止するような取組、例えば介護予防の教室や気軽にふらっと出掛けられるサロンのような場を町中に提供したり、高齢者のケアプランがその人の自立につながるものになるよう、OTさんや栄養士さんなど色んな職種の人が相談にのるような取組、などを広めていく

 

 介護保険はそれぞれの市町村ごとに運営されており(市町村ごとに保険料もばらばらです。)、市町村ごとに企画される上記の取組を財政面やノウハウ面からも後押しする

 

 日常的に医療的ケアが必要な人でも、安心して暮らせるような介護保険が使える施設をつくる(日常的な医学管理をしつつ、住まいとしても使えるような施設がありませんでした。医療も介護も必要な人を支えるということでこれを介護医療院といいます。)

  

②さらに、膨れ上がる介護費用への対応という観点からは、

 

 介護サービスはかかった費用の1割を本人の負担、所得のある人はその2割を本人の負担としていますが、このうちさらに所得がある人については、かかった費用の3割を本人の負担とする

 

 40歳から支払う介護保険料について、所得の高い企業に勤める人は多く、低い企業に勤める人からは少なくとることとし、支払い能力に応じた負担とする

 

といった、負担を増やすような改革も行っています。ニュースではよくこの辺が取り上げられていますよね。

 

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以前の記事でも書いたと思いますが、医療・介護の分野のターゲットイヤーは上述の2025年です。

※その次は団塊のジュニア世代が高齢者になる2040年です。このあたりで日本の高齢者人口は最大になる見込みです。

 

今後ますます増えていく医療・介護ニーズに対して、どのようにその地域で支えていくか、膨らむ費用についてどのように対策するのか。今回の改正はそんな流れの中にある改革だったのかなと思います。

 

介護保険って、若い人にはなじみがないと思いますが、規模も大きく社会的にも注目されています。

 

結構新聞にも載っていたりもするので、気づいた時にはこのような話があったとも、思い出してみてください。。!

ジェネリック医薬品

最近アレルギーの症状が酷くて、ずっとくしゃみが止まらなかったため、耳鼻科にかかりました。


先生によると、くしゃみが酷くて市販の点鼻薬を多用していたところ、それがかえって、鼻に悪かったということです。


先生はアレルギーを抑える薬を処方してくれ、僕は近くの薬局に行きました。

その際、
「この薬はジェネリック医薬品がありますが、ジェネリック医薬品にしますか?」と聞かれました。

「おっ」と思い、今回のブログのテーマはジェネリック医薬品にしたいと思います。

 

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さて、そもそもジェネリック医薬品って何かご存じですか。
黒柳徹子さんとかが、CMで宣伝していますよね。


ジェネリック医薬品の説明のために、

薬がつくられる過程を見てみたいと思います。


医薬品の開発はかなりの年月がかかる大変な作業です。

 

とにかく多くの基礎研究の段階で試行錯誤して、薬の「もと」を探します。

 

さらに、その薬の「もと」を動物に試して、副作用を確認し、次第に健康な人に試していってと、膨大な試験の繰り返しで、安全性を確保した上で有効成分を発見し、薬をつくっていくのですね。


一つの薬ができるまでは、なんと10年以上かかり、その開発費用も数百億から1千億円かかるそうです。そして、勿論こうした薬については、特許をとって、製薬会社は自社が苦労して開発した薬を独占的に売りまくるということになるのです。

 

さて、そのような特許ですがこれには20年という期限があります。

 

特許が切れると、この知的財産は一般に共有されますので、他の企業が類似薬をつくることができるのですね。


これが、ジェネリック医薬品、またの名を後発医薬品と言います。

また、最初に特許を取って売られていた薬については、先発品とか、先発医薬品といいます。先発品の後に出てくるので、「後発」医薬品というのですね。

 

なお、「ジェネリック」というのは「後発」という意味ではなく、「一般名」という意味です。イメージとしては、広く一般化された(特許が切れて知識が一般化された)ということでしょうね。


ジェネリック医薬品はそのようなことで、安全性・有効性が確認された成分を用いてつくられますので、開発費用が圧倒的に低くなります。開発費は1億円程度といわれています。


その結果、ジェネリック医薬品の特徴は、「効き目は同じ。だけど安い」ということになります。


ですが、先発品と全く同じという訳ではなく、薬に入っている添加物や、カプセルか錠剤かの違いなどはあるのですね。

 

さて、効き目が同じで安いのであれば、多くの人がジェネリックに変えれば、その分医療費は下がります。今、先発品を使っている人が、全部ジェネリックに変えた場合、なんと、4000億円の医療費削減の効果があるというデータもあります。

 

日本は現在の医療費が40兆円でどんどん伸びていく中、予防や健康づくりにより医療費の伸びを抑えようという動きもありますが、いまいちエビデンスが明らかではありません。

これに対し、ジェネリック医薬品の使用促進することは、確実に医療費の削減につながりますので、かなり期待されているのですね。


そんなジェネリック医薬品ですが、日本でも使用割合が実は伸びてきており、政府もその使用割合を80%にするとしています。

※世の中には特許が切れていなくて先発品だけの薬がありますので、これは除いていますので、世の中の薬の80%がジェネリック医薬品になるわけではありません。

 

日本は今、60%くらいですが、アメリカなどの海外と比べて、いまだにジェネリック医薬品の割合がこれでも低いですんので、まだまだ頑張る余地はあります。

 

転換が進まない理由としては、アンケートによると「先発品が使い慣れているから」とか、「効き目や副作用に不安があるから」が多いそうです。


確かに、添加物とかが違っていますので、その結果体質に合わない患者さんもいるかと思いますが、基本的には効き目は同じですので、地道に普及啓発を続けていく必要があるのかな、と思います。


実際に節約にもなり、僕は1か月分のアレルギーの薬をジェネリックに変えたところ、840円くらい安くなりました。

 

ジェネリック医薬品の使用促進に向けては、以下のように、既に多くの取組が進められています。


ジェネリックを積極的に処方する薬局について、診療報酬上の加算を行う。すなわち、収入が多く入るようにすることで薬局に積極的に転換の勧奨をさせる。)


・先発品を使っている人に、「ジェネリックに変えたらこれくらい安くなりますよ」という通知を送る取組をする


・保険証に「私はジェネリックを希望します」という旨の記載があるシールを貼る取組(保険証に貼っておけば、わざわざ言わなくても意思表示できますよね)


さらに、今後は、ジェネリックがあるのに先発品を希望する場合、ジェネリックと先発品の値段の差額を患者に払わせてはどうか、という仕組みも検討されています。

フランスなどではあるそうですが、先発医薬品を使いたければ、その分負担しなければいけないという仕組みです(参照価格制度といいます。)。

 

あの手この手で、ジェネリック医薬品の使用促進が図られていますが、やっぱり意外と知られていませんよね。
機会があれば、ジェネリック医薬品に積極的に変えてみてください!

 

(参考)国の審議会で最近、後発医薬品が話題になっていました。

www.mhlw.go.jp

データに基づく医療制度改革

 

このブログではどちらかというと、保険(ファイナンス)の話が多かった気がしますが、今回は医療を供給する側(デリバリー)、病院やクリニックの改革の記事を書いてみたいと思います。

 

まず、日本の医療についてどのような印象をみなさん持っているでしょうか。

保険証があれば日本のどこの病院でも安くて安心して医療を受けられますよね。

他の国ではそういう訳にもいかないところもあるので、これはかなりありがたいことです。

 

一方で課題も指摘されていて、昔から言われている医療改革のテーマは、

 

「病院やクリニックの役割分担をしっかりして、患者さんの容態にあった医療を提供していこう。役割分担をしっかりしたら、各機関が連携して患者さんに対応できるようにしよう」

 

ということです。

 

ちょっと分かりにくくてすみませんが、日本では地域の中に似たような機能をもち、経営主体が異なる大小様々な病院が乱立しています。

 

このため、人材が各病院に散らばっていたり、同じような医療機器が投資されているという非効率な仕組み(CTスキャンの数では世界一です。)となっているのですね。

他の国と比較しても、①病院の数が多い、②入院期間が長い、③一つのベッドに対する医師や看護スタッフさんが少ない、というデータがあります。

 

これを改善して、

・病状が急変した患者さんを主に受け入れる役割

・病状が落ち着いた患者さんをお家に帰れるように支援する役割

・病状は安定しているけど長い期間にわたって継続的な治療が必要な患者さんを受け入れる役割・・・etc

といった役割分担がしっかりでき、適材適所に資源が投入していたら、なんだかもっとよい医療が受けられるような気がしますよね。

 

このような課題は昔からあったそうですが、日本の医療機関の多くは民間主体のものであるため、全体最適な役割分担が達成されているという訳ではありません。行政がこうやれ!といっても、従う義理はないのですよね。

 

また、保険証を持っていれば、軽い体調不良の場合でも、どの病院にでも気軽にいけますよね。

これは日本の医療のいいところですが、大きな病院にそういう人が行くと、高度な医療を提供する病院と患者さんサイドのミスマッチが起きてしまいます。

 

ちょっと具合が悪かったら、その地域のなじみのある町のお医者さん相談にして、重病そうだったら、対応してくれそうな病院を紹介するという方が良さそうです。

 

このように、それぞれの病院やクリニックが役割を明確にして、地域の医療を担っていただければいいのではないか、ということです。

 

この課題に対してこれまでも勿論いろいろな取組がなされてきました。

 

一番大きなものは、診療報酬(シンリョウホウシュウ)による誘導です。

 

国は医療機関が提供するサービスについての公定価格を決めています。

初診料はもちろん、検査や処置に対応した値段がそれぞれ非常に細かく決められており、診療報酬が医療機関の収益に直結する仕組みとなっています。

 

そのため、診療報酬の値付けを変えることによって、政策誘導を行うことができます。

 

リハビリのベッドを増やしたかったら、リハビリのベッドに支払う診療報酬を引き上げます。そうしたらリハビリのベッドが多くあれば病院は儲かると考え、ベッドを増やすかもしれません。

 

あるいは、入院の期間を短くしたいと考えるならば、医療サービスを提供した分だけお金を請求できる方法(出来高払いと言います)をやめて、

入院期間にかかわらず、病気に応じて一人当たりの値段を請求する方法(包括払いと言います。)にすれば、

病院は患者さんに長く入院されては、回転が悪くて儲からないので、早く退院してもらうように促すでしょう。

 

ですが、診療報酬の価格を上げたり、下げたり、、、ということだけでは、最終的なアクションは病院の経営判断によるので意外な副作用が出たり、全国一律に決められているので地域ごとの特性に応じて対応はできなかったりして、限界も指摘されています。

※ 看護婦さんの配置が多いと報酬を高くするとしたら、看護婦さんの奪い合いのようなものが起きましたことも過去あります。

 

そこで現在、新たに推し進められているのは、「データ」に基づく改革です。

 

以前の記事でも少し触れたことがありますが、最近の医療情報はどんどん電子化されてきており、どの病院が、どのような患者さんに対し、どのような治療を行ってきたのかが電子データとして蓄積されてきています。

 

例えばAという地域で脳梗塞で容態が急変した患者さんが、A地域の病院で治療を受けているのか、隣のB地域で治療を受けていることが多いのかが数字で分かります。

 

B地域の病院で治療を受けている場合が多いとすると、脳梗塞の急変に対応する機能がA地域に足りないこと、そのような課題があることが分かりますよね。

今まで定性的な課題であったものが客観化・数値化されるのです。

 

また、そもそもとして、地域に、急性期の患者さんに対応するベッドや、容態が安定している患者さんに対応するベッドの数がいくらあるのかについても、正確に把握する取組が進められています。

 

このように、データに基づいて、今この地域ではどのような病院がどれくらいあって、患者さんはどのような医療を受けているのかが分かってきています。さらに将来人口の推計もあるので、人口構成が変わったりすると、どのような役割を持つベッドが、それぞれどれくらい必要か、ということが見通し始めることが出来ています。

 

これを地域医療構想と呼ばれています。

 

実は昨年度(2016年度)中にすべての都道府県でこの地域医療構想が策定されており、「2025年」の将来像が描かれました。

 

※ ちなみに、2025年はいわゆる団塊の世代(1950年生まれまで)の方々が75歳以上になるので、医療や介護のニーズが高まるターゲットイヤーと広く共有されている年なので覚えておいて損はないと思います。

 

今後は、いよいよこの構想を実現していくフェーズに入ります。ですが、それがまた大変なものになるのではないかと思います。

 

各病院の経営はそれぞれですが、客観的なデータで課題が示された以上は、何らかの変革をしていく気になりますよね。

一方、「この地域では将来ベッドの数が過剰になることが確実なので、お宅のベッドをつぶしてください」と言われても経営への影響もありますし、言うは易しで難しい問題です。

 

今後どうなるか注視が必要ですが、今まで長く指摘がされてきた医療機関の間の役割分担・連携という課題が、データに基づく改革でどのように進んでいくのか、気になりますね。

こども保険について考えてみた

最近のニュースで、「こども保険」をつくってはどうか?というものを聞きました。

これまた、以前ブログ記事(小泉進次郎議員の提言、健康ゴールド免許の可能性 - 若者による社会保障のブログ)にしましたが、小泉進次郎さんを中心とした会合からの提言らしいです。

 

少子高齢化が進展する中、これからを担う若い世代への支援ということで打ち出された「こども保険」について、少し真面目に考えてみたいなと思います。

 

まず、提案されている、こども保険とはいかなるものでしょうか。

(原文はこちら)

fumiaki-kobayashi.jp

 

簡単にポイントをまとめると、以下のような感じです。

 

・年金とか医療の保険料に少しだけ上乗せして(月々160円くらい)保険料を確保

・そしたら財源規模は3400億円。それで就学前の児童全員に月々5000円支給!さらには待機児童解消にもつなげる。

・さらに医療や介護の費用を抑え、その分こども保険の保険料に回せば、1.7兆円の規模になる。そうしたら月々2.5万円を支給できる!保育園や幼稚園の平均的な費用は1~3万円くらいなので実質的に無償化。

 

結構、最近知り合いからよく保育園に入れないとか聞きますし、訳もわけらず毎月結構な額の保険料が年金とかに取られる身としては、なかなかいい提案なのではないかと思います。

 

ここで、少し「こども保険」について少し真面目に考えてみたいと思います。

 

みなさん、まず「保険」とはどのようなものか少し考えてみてください。

保険というのは、何か困った時に備えて、予めみんなで保険料を納めておいて、リスクをシェアしておこう、という仕組みですよね。

 

それでは、「こども保険」というのは何のリスクに備えるのでしょうか。

 

① こどもが出来ると保育料が沢山かかって生活費が苦しくなるリスク

② こどもが出来ても保育園に入れなくて職場に戻れなくなるリスク

 

というのが考えられますね。

 

さて、上記のリスクに備える「こども保険」ですが、誰が保険料を払うのでしょうか。

 

保険料は「こんなことが自分の身に起きたら困るなぁ」という人が予め皆で払っておくものですね。そのため、上記のリスクを抱えている人が払うことになります。

 

高齢者はどうでしょう。高齢者はこどもを持つことがあまりなさそうなので、保険料は支払う必要はなさそうですね。

 

次に、若い世代。結婚した新婚夫婦とかであればリスクはありますよね。なので保険料を払う必要があります。

 

では、「俺は生涯独身を貫いて絶対こどもを持つことなんてないぞ!」と強い覚悟がある人はどうでしょうか。この人が少額とはいえ保険料を支払う必要があるのでしょうか。 

ちょっと悩ましいのですが、

「あなた、今そう言っていますけど、本当に好きな人が出来て、子どもをもちたくなるかもしれませんよ。明日運命の人と出会うかもしれませんよ。明日運命の人が現れることが絶対ないと言い切れるんですか!!」

と言えば、しぶしぶですが、何とか保険料を払ってくれる気がします。

 

では、身体的な理由で、子どもを持てない人はどうでしょうか。

こういう人はこどもを持つというリスクはないので保険料を払う必要はないですよね。本当はこどもが欲しいのに・・という人から更に保険料までとったらダブルパンチな気がします。

 

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さて、今までのことを踏まえると、こども保険は以下のような制度設計になるのかなと思います。

 

・保険料を支払うのはこどもを持つ可能性がある世代。(20~50歳くらい?)

高齢者は参加しない。

・身体的な理由で子どもを持てないひとは参加しない。

 

ここで、子どもが少ないと社会全体の活力がなくなる。そのため高齢者にも保険料を求めよ!という指摘もあるかと思います。

ですが、やはり自分個人が子どもをもって給付が支給されない確率があまりにも低いとさすがに保険料を支払う気がしませんよね、なので難しいと思います。

 

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さて長くなってきましたので、こども保険の課題について触れて終わりたいと思います。

 

私が課題であると思うのは、ずばり、保険料の未納です。

 

例えば20歳から50歳の人に保険料を納めてもらうこととした場合、40歳くらいの人はもしかしたら「もう俺子ども持つ予定もないから保険料納めるのやめよう」と思うかもしれません。

 

保険料未納者の発生です。

 

そんなやつは放っておきたいのですが、実は放っておけません。

逆選択」という言葉を知っていますか?経済学で出てくる話ですよね。

 

経済学ではレモン市場の話という例があります。

レモンというのは質の悪い中古車のことを言います。

 

例え話ですが、中古車市場の中には、しっかり動く車とレモンがあるとしましょう。

 

そこで車がレモンか否かを知ることができない買い手がくるとします。

⇒買い手は一定確率でレモンがあることを知っているので、しっかり動く車の適正価格より低い額の価格を売り手に提示します。

⇒しっかり動く車を売ろうとしている人は、適正価格より安価では売りたくないので、市場から撤退します。

⇒その結果、市場にはレモンしか残らない、というわけです。

 

保険制度も一緒で、仮に保険料を納めないという人を無視してしまうと、以下のようなことが起こります。

40歳くらいの一部の人が保険料を納めなくなる

⇒ 抜けた人の分の保険料が足りなくなるので、他の人の保険料が上がる

⇒ 保険料が高くなって、保険料を納めなくなる人が増える

⇒ 以下、繰り返し。最後はハイリスク者しかいなくなり保険料も高騰する・・。

 

なのでこれを避けるためには、絶対に保険料を納めてもらう必要があるわけです。

 

「こども保険」って特に50歳とかになると保険料を納めるインセンティブが低くなりますよね。

そのため、ペナルティを設けて

・保険料を払わなかった分だけ将来年金がもらえなくする、

・罰金を払わせる

とかする必要があるのではないかと思います。

 

ちなみに介護保険では保険料の未納の期間があれば、その期間分、保険の給付のクオリティを落とすというペナルティを設けていますよ。

 

また、今まで触れてきませんでしたが、正直「こどもを持つこと」を保険事故とするのは少し無理がある気がします。

 

保険事故は、病気・けが・介護など偶然起こるものですよね。

他にも火事や地震保険というのも想像してみてください。

 

そうすると、やっぱりこどもを持つことって保険事故っぽくないんですよね。

多くの人は子どもが欲しいという意志をもって子どもを持つはずですよね。

 

保険というものは将来何が起こるか分からないリスクに備えるものなのですが、「子どもを持つこと」って、やっぱり個々人の意思に基づくもので、予見可能性があるので、やはり、「こども保険」は保険制度になじまないのかなぁと思います。

 

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小泉進次郎さんらの問題意識は、税か保険の財源調達能力は、日本では保険の方が高く、消費税の引き上げも延期になって、財源のあてにならないから、保険という概念を持ち込んでみたらどうか、というご提案だったかと思います。

 

保険制度の筋からいくとやっぱり「こども保険」というのは難しいのかな、と思うのですが、問題意識は分かるのでなんとかならんかなぁと思ってしまいますよね。

 

以前、介護保険でも同様の話をしたことがあるので、お時間がある方は是非こちらの記事もチェックしてみてください。

 

ginoway.hatenadiary.jp

介護離職ゼロとは。。(一億総活躍社会)

 今回は、一年前くらいによくニュースにも取り上げられていました、「一億総活躍社会」について取り上げたいと思います。

 

ニュースの移り変わりは早いもので、そもそも何だっけ?という方も多いのではないでしょうか。新しいものを打ち出した際は結構な話題になりますが、一旦打ち出されてひと段落したら、人間忘れるものですね。

 

一億総活躍の前は、地方創生が盛り上がっていましたよね。今年は働き方改革、というのが目玉なのでしょうか。。

いずれも今の社会に必要なものを重点的にプラン作りをして、取り組むわけですね。

 

さて、一昨年の秋に、現政権の「新三本の矢」が打ち出されました。それは、

① 希望を生み出す強い経済(GDP600兆円)

② 夢を紡ぐ子育て支援(希望出生率1.8)

③ 安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)

の3つでした。この三本の矢を具体化するのが、一億総活躍社会のプランです。

 

子育てや社会保障も充実すれば、消費が喚起され、労働市場への参入も進む、その結果経済もよくなり、その成長の果実が子育てや将来の不安の解消につながる・・・という循環を生み出していく、という関係性にあるようですね。

 

一億総活躍とは、政府の資料によると、

少子高齢化という日本の構造的な問題について、正面から取り組むことで歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持
● 一人ひとりの日本人、誰もが、家庭で、職場で、地域で、生きがいを持って、充実した生活を送ることができること

とのことです。

 

日本の人口は減少局面であり、毎年数十万人ずつ減っています。それを食い止めるということ。日本の出生率は2005年に1.26で最低になってから、少し持ち直して、今は1.4くらいです。これを2020年に1.6、2030年に1.8、2040年に2.1となると、ちょうど、人口を一億人をキープできるそうです。

 

海外に目を向けると、フランスでは子育てへの支援が厚くしたことで、出生率を1.7から2まで持ち直しています。このように、社会政策で回復してきた例があるんですね。

 

少しそれますが、フランスなどでは、女性が結婚する年齢より、第一子をもつ年齢の方が低いです。

日本では、結婚し、子どもに恵まれる、という何となくの順序が社会的にあるので、驚いてしまいますよね。シングルマザーであっても、それなりに生活をしていけるということで、保育や、手当が充実していることや、文化的な考え方が、出生率の回復につながっているのですね。

 

ちなみに希望出生率についてですが、日本の若年層への調査によると、結婚した場合にほしい子どもの数が、2.1人くらいであります。

そこから、結婚願望がない人もいることを考慮して、「みんなの結婚願望が叶い、望むくらいの子どもがもてたら、出生率はこれくらいになる」という数字を国の目標にしているようです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、当ブログは社会保障のブログですので、この一億総活躍のうち、社会保障の関係で、特に介護離職ゼロ、というものを取り上げたいと思います。

 

介護離職とは、親の介護をしなければならないため、仕事をやめてしまうことです。

 

介護は昔は家族が行うのが一般的でしたが、今は高齢者も長生きですし、子どもも少ないし、男性女性ともに働くのが普通ですので、「介護の社会化」が進められてきました。すなわち、家族が介護をするのではなく、社会全体で高齢者の介護をしよう、ということです。

 

そのために、2000年には介護保険もでき、みんなが保険料を払う仕組みを作って、介護事業者も増やして供給も確保してきたのですが、なお親の介護が原因で離職される方もいるので、それをなくそう、ということですね。

 

具体的な取組としては、以下のようなことを進めています。

 

①サービスの供給を増やす

よく、待機児童ではないですが、施設に入れる順番を待っている高齢者がいると聞いたことはないでしょうか。特養という老人ホームには順番待ちの人が全国で10万人くらいいるそうです。介護サービスの供給が追い付いていないため、結局家族が介護しないといけない、という状況をなくすため、整備費を補助するなどで、それを増やします。

 

②介護職員を確保を進める

今、高齢者がどんどん増える中、介護を仕事にする職員さんは足りていません。それには他の職種と比べて給料が低いという理由がありましたので、月々1万円くらいお給料が増えるように、介護サービス事業者に支払うサービス価格を増やしました。

他にも、介護職を目指す人への奨学金を充実させたり、一旦、介護の仕事を離れた人が再就職しやすいよう準備金の仕組みを用意したりします。

 

③介護休業がとりやすく

20代くらいの若い人にとってはあまりなじみがないものかもしれませんが、介護休業というものがあります。これは、親が介護になった場合、手続やら何やらのため休めるという制度です。法律を改正して、休んだ時にもらえる金額を増やしたり、半日だけ介護休業できるようにしたり、、ということをしています。

 

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以上つらつらと書いてしまいました。

社会保障はあくまでも社会のサブシステムであって、価値を作り出し、富を生み出し、お給料で皆に分配される、労働市場のメインシステムを支えるものです。

 

介護離職ゼロは、サブシステムを補強し、メインシステムを下支えするものなのだと思います。

働き盛りの世代が介護のため仕事をやめるって、ちょっと避けたいものですよね。

 

でも併せて考えたいのは、

若者のための介護離職ゼロといいつつ、高齢者への給付が結局のところ増える政策であることですね。

 

かつて19世紀のイギリスでスピーナムランド法というものがありました。

これは、働いても基本生活費(パンの価格から算出)まで達しない人には、足りない分を補てんしてあげる、という制度だったのですが、その結果、どうせ賃金を払わなくても埋め合わせがくるので、企業が給料を下げたり、労働者の勤労意欲を下げたりして、失敗に終わりました。

サブシステムの存在感が大きくなりすぎると、肝心なメインシステムに悪影響を及ぼす、そんな例かと思います。

 

形はちょっと違っていますが、今の日本もサブシステムの存在が大きくなりすぎているのではないかと思います。

法律の条文・・・見るだけで眠くなるもの

久々の投稿となってしまいました。

 

今回の記事では、社会保障に限らないのですが、「法律の書かれ方」ということを取り上げたいと思います。

 

税制、国防、社会保障・・などなど、国の基本的な事項は、法律で決められています。例えば、消費税を10%に引き上げる時期については、

 

社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律、という法律(消費税の引き上げを決めている法律)の附則第1条で、この法律が施行(実行に移されること)されるのは、「平成31年10月1日」であると明記されています。

 

このように、多くの人が喧々諤々議論して決められた制度の多くのものは、最終的に法律で明文化されることになります。

 

今回は、その法律の書き方がどうなっているのか、ということを少し記事にしたいと思います。

 

まず、法律のイメージってどのようなものでしょうか。

分かりにくい・・・ですよね。はっきりいって分かりにくいと思います。

 

なぜそうなるかというと、法律を書き下すにあたって、

①誰が読んでも一義的に意味が捉えられること

②可能な限り短いこと

といったものが作成者の信条としてあるからかと思います。

 

まず、①「誰が読んでも一義的に意味が捉えられること」ということについて考えてみたいと思います。

 

例えば、

「太郎君は、綺麗な花子さんの花に水をあげた」

という文章があるとします。

 

これでは、「綺麗な」のは「花子さん」なのか、「花子さんの花」なのか、

修飾関係が分かりませんよね。

 

なので、

「太郎君は、綺麗な、花子さんの花に水をあげた」

としないといけません(綺麗なのは、花)。 

 

また、次の文章で、

「太郎君は、たか子さんの花に水をあげた」

とあるとします。

 

ここでは前と比べて、「綺麗な」という修飾語がないので、

「花子さんの花は綺麗だけど、たか子さんの花は綺麗ではない」

ということが分かります。

 

もし、この文章を作成した人が、両方とも同じくらいの綺麗さであると考えているのであれば、この表現は適切ではありません。

 

このように、一つ一つのワーディングにこだわって法律は書かれるのですが、逆にその分、長くなります。

 

また、②「可能な限り短いこと」、というのは、

 

これは「短いほど美しい」というような意識がなんとなくあるようで、これは職人芸みたいなもの思います。

法律が出来たら、官報という政府が発行する印刷物に全文を載せるのですが、昔は紙がもったいないという意識から、出来る限り短くした方がいい、ということになっていたようです。

今もその名残があるのですが、逆に読みにくくなっているのではないかと思います。

 

ここでは例示として、残業時間規制の関係の「サブロク協定」に関連する条文を見てみたいと思います。(眠くなるので飛ばして下さってもいいです。)。

 

労働基準法

(時間外及び休日の労働)
第36条  使用者は、・・・労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし・・・た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。・・

 

ここでは、「前条の休日」とか書かれていますね。

「休日に関する協定」だけだと何のことか分かりませんが、「前条の休日に関する協定」としてくれれば、なるほど、前条(第35条ですね。)に書いてあるやつか、と特定できるので、意味が紛れがなくなるというわけです。

 

また、この条文では、「(以下この条において「労働時間」という。)」と、略称規定も置かれていますね。これは略称規定を置くことで、条文が短くなるテクニックです。

 

さて、そんな法律が、どのような過程で作成されているかを紹介したいと思います。

 

① 役所の事務方が原案を作成

② 内閣法制局でチェック

③ 時の政権が閣議で決定

④ 国会で審議し、成立

 

以前③・④に関連した記事は書いたことがあるので(以下のリンクです)、

制度改正はどのようにして行われるのか - 若者による社会保障のブログ

 

今回は、①・②について少し説明したいと思います。

 

①原案の作成作業

 

これは特に法律家とか弁護士資格がある人が書いているわけではなく、役所の普通の人間(理系の人が書くこともあります。)が作成します。

法律の書き方には様々なルールがありますが、それに則っていれば、誰が書いても構いません。

 

最近、花粉症がやばいのですが、「人前でくしゃみをしてはならない」、という法律を新しく作ってみるとしましょう。すると、

 

◎くしゃみ禁止法

第1条 国民は、公共の場でくしゃみをしてはならない。

 

となります。ですが、病院やクリニックには、花粉症の人もくるので、そこは免除してあげるとすると、、、

 

◎くしゃみ禁止法

第1条 国民は、公共の場(病院及び診療所を除く。)でくしゃみをしてはならない。

 

となりますね。

 

このとき、「病院と診療所」と言わず、「病院及び診療所」といいます。

これは法律を書くときの決まりです。

また、「クリニック」という用語は、他の法律にも出てこないので使えません。

 

厳密にいうと、「病院」とは、医療法上に定義があって、「医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するもの」です。「診療所」は、入院施設がなかったり、ベッド数が19人以下のことですね。

 

さらに、罰金もかけるとすると、

 

◎くしゃみ禁止法

第1条 国民は、次に掲げる場合を除き、公共の場(病院及び診療所を除く。)でくしゃみをしてはならない。

第2条 前条の規定に違反して、くしゃみをした者は、10万円以下の罰金に処する。

 

この時、第2条では、「第1条の規定」とはせず、「前条の規定」という言葉を使います。

「第1条」というと3文字ですが、「前条」と言えば2文字になって、文章が短くなるから、という意味だと思います。

 

こんな感じで、他の法律で同じような用例がないか、一般的な法律のルールに抵触していないか、確認しながら原案を作成していくのですね。

 

② 内閣法制局でチェック

 

このようにして、作成された原案は、内閣法制局という法律をチェックする役所が審査し、様々な角度で検討され、洗練されます。

日本の法律は全て内閣法制局が法的に問題ないかチェックしています。そのため、法制局長官が、憲法の解釈についても国会で答弁していたりしますね。

 

くしゃみ禁止法の例でいうと、以下のような指摘が大量に浴びせられます。

 

・人の生理現象を規制する過去の例は他にあるのか。「おなら」は禁止しないのに、「くしゃみ」を禁止する合理性はなにか。

・罰金は10万円が妥当なのか、他の制度では10万円とか30万円とかあるぞ。

・法律の形式は、新法をつくるということでいいのか。既存の法律で、「おなら禁止法」というものがあれば、それを改正して、「くしゃみ及びおなら禁止法」とすればよいのではないか。

 

等々です。これがしっかりと一つ一つ課題をつぶしてより洗練させていくわけですね。

 

このように、法律の文言一つ一つが精査された成果物が、法律になるわけです。

 

逆に言うと、法律の書きぶり一つ一つに、どうしてこう書かれているかの合理的な理由があるのですね。

 

このような仕組みを知って、少しでも法律に抵抗感がなくなればいいなと思います。