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若者による社会保障のブログ

ニュースで見るけど難しくてよく分からない社会保障を少しだけ噛み砕いていくブログです。若者目線で綴っていきます。

法律の条文・・・見るだけで眠くなるもの

久々の投稿となってしまいました。

 

今回の記事では、社会保障に限らないのですが、「法律の書かれ方」ということを取り上げたいと思います。

 

税制、国防、社会保障・・などなど、国の基本的な事項は、法律で決められています。例えば、消費税を10%に引き上げる時期については、

 

社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律、という法律(消費税の引き上げを決めている法律)の附則第1条で、この法律が施行(実行に移されること)されるのは、「平成31年10月1日」であると明記されています。

 

このように、多くの人が喧々諤々議論して決められた制度の多くのものは、最終的に法律で明文化されることになります。

 

今回は、その法律の書き方がどうなっているのか、ということを少し記事にしたいと思います。

 

まず、法律のイメージってどのようなものでしょうか。

分かりにくい・・・ですよね。はっきりいって分かりにくいと思います。

 

なぜそうなるかというと、法律を書き下すにあたって、

①誰が読んでも一義的に意味が捉えられること

②可能な限り短いこと

といったものが作成者の信条としてあるからかと思います。

 

まず、①「誰が読んでも一義的に意味が捉えられること」ということについて考えてみたいと思います。

 

例えば、

「太郎君は、綺麗な花子さんの花に水をあげた」

という文章があるとします。

 

これでは、「綺麗な」のは「花子さん」なのか、「花子さんの花」なのか、

修飾関係が分かりませんよね。

 

なので、

「太郎君は、綺麗な、花子さんの花に水をあげた」

としないといけません(綺麗なのは、花)。 

 

また、次の文章で、

「太郎君は、たか子さんの花に水をあげた」

とあるとします。

 

ここでは前と比べて、「綺麗な」という修飾語がないので、

「花子さんの花は綺麗だけど、たか子さんの花は綺麗ではない」

ということが分かります。

 

もし、この文章を作成した人が、両方とも同じくらいの綺麗さであると考えているのであれば、この表現は適切ではありません。

 

このように、一つ一つのワーディングにこだわって法律は書かれるのですが、逆にその分、長くなります。

 

また、②「可能な限り短いこと」、というのは、

 

これは「短いほど美しい」というような意識がなんとなくあるようで、これは職人芸みたいなもの思います。

法律が出来たら、官報という政府が発行する印刷物に全文を載せるのですが、昔は紙がもったいないという意識から、出来る限り短くした方がいい、ということになっていたようです。

今もその名残があるのですが、逆に読みにくくなっているのではないかと思います。

 

ここでは例示として、残業時間規制の関係の「サブロク協定」に関連する条文を見てみたいと思います。(眠くなるので飛ばして下さってもいいです。)。

 

労働基準法

(時間外及び休日の労働)
第36条  使用者は、・・・労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし・・・た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。・・

 

ここでは、「前条の休日」とか書かれていますね。

「休日に関する協定」だけだと何のことか分かりませんが、「前条の休日に関する協定」としてくれれば、なるほど、前条(第35条ですね。)に書いてあるやつか、と特定できるので、意味が紛れがなくなるというわけです。

 

また、この条文では、「(以下この条において「労働時間」という。)」と、略称規定も置かれていますね。これは略称規定を置くことで、条文が短くなるテクニックです。

 

さて、そんな法律が、どのような過程で作成されているかを紹介したいと思います。

 

① 役所の事務方が原案を作成

② 内閣法制局でチェック

③ 時の政権が閣議で決定

④ 国会で審議し、成立

 

以前③・④に関連した記事は書いたことがあるので(以下のリンクです)、

制度改正はどのようにして行われるのか - 若者による社会保障のブログ

 

今回は、①・②について少し説明したいと思います。

 

①原案の作成作業

 

これは特に法律家とか弁護士資格がある人が書いているわけではなく、役所の普通の人間(理系の人が書くこともあります。)が作成します。

法律の書き方には様々なルールがありますが、それに則っていれば、誰が書いても構いません。

 

最近、花粉症がやばいのですが、「人前でくしゃみをしてはならない」、という法律を新しく作ってみるとしましょう。すると、

 

◎くしゃみ禁止法

第1条 国民は、公共の場でくしゃみをしてはならない。

 

となります。ですが、病院やクリニックには、花粉症の人もくるので、そこは免除してあげるとすると、、、

 

◎くしゃみ禁止法

第1条 国民は、公共の場(病院及び診療所を除く。)でくしゃみをしてはならない。

 

となりますね。

 

このとき、「病院と診療所」と言わず、「病院及び診療所」といいます。

これは法律を書くときの決まりです。

また、「クリニック」という用語は、他の法律にも出てこないので使えません。

 

厳密にいうと、「病院」とは、医療法上に定義があって、「医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するもの」です。「診療所」は、入院施設がなかったり、ベッド数が19人以下のことですね。

 

さらに、罰金もかけるとすると、

 

◎くしゃみ禁止法

第1条 国民は、次に掲げる場合を除き、公共の場(病院及び診療所を除く。)でくしゃみをしてはならない。

第2条 前条の規定に違反して、くしゃみをした者は、10万円以下の罰金に処する。

 

この時、第2条では、「第1条の規定」とはせず、「前条の規定」という言葉を使います。

「第1条」というと3文字ですが、「前条」と言えば2文字になって、文章が短くなるから、という意味だと思います。

 

こんな感じで、他の法律で同じような用例がないか、一般的な法律のルールに抵触していないか、確認しながら原案を作成していくのですね。

 

② 内閣法制局でチェック

 

このようにして、作成された原案は、内閣法制局という法律をチェックする役所が審査し、様々な角度で検討され、洗練されます。

日本の法律は全て内閣法制局が法的に問題ないかチェックしています。そのため、法制局長官が、憲法の解釈についても国会で答弁していたりしますね。

 

くしゃみ禁止法の例でいうと、以下のような指摘が大量に浴びせられます。

 

・人の生理現象を規制する過去の例は他にあるのか。「おなら」は禁止しないのに、「くしゃみ」を禁止する合理性はなにか。

・罰金は10万円が妥当なのか、他の制度では10万円とか30万円とかあるぞ。

・法律の形式は、新法をつくるということでいいのか。既存の法律で、「おなら禁止法」というものがあれば、それを改正して、「くしゃみ及びおなら禁止法」とすればよいのではないか。

 

等々です。これがしっかりと一つ一つ課題をつぶしてより洗練させていくわけですね。

 

このように、法律の文言一つ一つが精査された成果物が、法律になるわけです。

 

逆に言うと、法律の書きぶり一つ一つに、どうしてこう書かれているかの合理的な理由があるのですね。

 

このような仕組みを知って、少しでも法律に抵抗感がなくなればいいなと思います。