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20代の社会保障のブログ

ニュースで見るけど難しくてよく分からない社会保障を少しだけ噛み砕いていくブログです。若者目線で綴っていきます。

データに基づく医療制度改革

 

このブログではどちらかというと、保険(ファイナンス)の話が多かった気がしますが、今回は医療を供給する側(デリバリー)、病院やクリニックの改革の記事を書いてみたいと思います。

 

まず、日本の医療についてどのような印象をみなさん持っているでしょうか。

保険証があれば日本のどこの病院でも安くて安心して医療を受けられますよね。

他の国ではそういう訳にもいかないところもあるので、これはかなりありがたいことです。

 

一方で課題も指摘されていて、昔から言われている医療改革のテーマは、

 

「病院やクリニックの役割分担をしっかりして、患者さんの容態にあった医療を提供していこう。役割分担をしっかりしたら、各機関が連携して患者さんに対応できるようにしよう」

 

ということです。

 

ちょっと分かりにくくてすみませんが、日本では地域の中に似たような機能をもち、経営主体が異なる大小様々な病院が乱立しています。

 

このため、人材が各病院に散らばっていたり、同じような医療機器が投資されているという非効率な仕組み(CTスキャンの数では世界一です。)となっているのですね。

他の国と比較しても、①病院の数が多い、②入院期間が長い、③一つのベッドに対する医師や看護スタッフさんが少ない、というデータがあります。

 

これを改善して、

・病状が急変した患者さんを主に受け入れる役割

・病状が落ち着いた患者さんをお家に帰れるように支援する役割

・病状は安定しているけど長い期間にわたって継続的な治療が必要な患者さんを受け入れる役割・・・etc

といった役割分担がしっかりでき、適材適所に資源が投入していたら、なんだかもっとよい医療が受けられるような気がしますよね。

 

このような課題は昔からあったそうですが、日本の医療機関の多くは民間主体のものであるため、全体最適な役割分担が達成されているという訳ではありません。行政がこうやれ!といっても、従う義理はないのですよね。

 

また、保険証を持っていれば、軽い体調不良の場合でも、どの病院にでも気軽にいけますよね。

これは日本の医療のいいところですが、大きな病院にそういう人が行くと、高度な医療を提供する病院と患者さんサイドのミスマッチが起きてしまいます。

 

ちょっと具合が悪かったら、その地域のなじみのある町のお医者さん相談にして、重病そうだったら、対応してくれそうな病院を紹介するという方が良さそうです。

 

このように、それぞれの病院やクリニックが役割を明確にして、地域の医療を担っていただければいいのではないか、ということです。

 

この課題に対してこれまでも勿論いろいろな取組がなされてきました。

 

一番大きなものは、診療報酬(シンリョウホウシュウ)による誘導です。

 

国は医療機関が提供するサービスについての公定価格を決めています。

初診料はもちろん、検査や処置に対応した値段がそれぞれ非常に細かく決められており、診療報酬が医療機関の収益に直結する仕組みとなっています。

 

そのため、診療報酬の値付けを変えることによって、政策誘導を行うことができます。

 

リハビリのベッドを増やしたかったら、リハビリのベッドに支払う診療報酬を引き上げます。そうしたらリハビリのベッドが多くあれば病院は儲かると考え、ベッドを増やすかもしれません。

 

あるいは、入院の期間を短くしたいと考えるならば、医療サービスを提供した分だけお金を請求できる方法(出来高払いと言います)をやめて、

入院期間にかかわらず、病気に応じて一人当たりの値段を請求する方法(包括払いと言います。)にすれば、

病院は患者さんに長く入院されては、回転が悪くて儲からないので、早く退院してもらうように促すでしょう。

 

ですが、診療報酬の価格を上げたり、下げたり、、、ということだけでは、最終的なアクションは病院の経営判断によるので意外な副作用が出たり、全国一律に決められているので地域ごとの特性に応じて対応はできなかったりして、限界も指摘されています。

※ 看護婦さんの配置が多いと報酬を高くするとしたら、看護婦さんの奪い合いのようなものが起きましたことも過去あります。

 

そこで現在、新たに推し進められているのは、「データ」に基づく改革です。

 

以前の記事でも少し触れたことがありますが、最近の医療情報はどんどん電子化されてきており、どの病院が、どのような患者さんに対し、どのような治療を行ってきたのかが電子データとして蓄積されてきています。

 

例えばAという地域で脳梗塞で容態が急変した患者さんが、A地域の病院で治療を受けているのか、隣のB地域で治療を受けていることが多いのかが数字で分かります。

 

B地域の病院で治療を受けている場合が多いとすると、脳梗塞の急変に対応する機能がA地域に足りないこと、そのような課題があることが分かりますよね。

今まで定性的な課題であったものが客観化・数値化されるのです。

 

また、そもそもとして、地域に、急性期の患者さんに対応するベッドや、容態が安定している患者さんに対応するベッドの数がいくらあるのかについても、正確に把握する取組が進められています。

 

このように、データに基づいて、今この地域ではどのような病院がどれくらいあって、患者さんはどのような医療を受けているのかが分かってきています。さらに将来人口の推計もあるので、人口構成が変わったりすると、どのような役割を持つベッドが、それぞれどれくらい必要か、ということが見通し始めることが出来ています。

 

これを地域医療構想と呼ばれています。

 

実は昨年度(2016年度)中にすべての都道府県でこの地域医療構想が策定されており、「2025年」の将来像が描かれました。

 

※ ちなみに、2025年はいわゆる団塊の世代(1950年生まれまで)の方々が75歳以上になるので、医療や介護のニーズが高まるターゲットイヤーと広く共有されている年なので覚えておいて損はないと思います。

 

今後は、いよいよこの構想を実現していくフェーズに入ります。ですが、それがまた大変なものになるのではないかと思います。

 

各病院の経営はそれぞれですが、客観的なデータで課題が示された以上は、何らかの変革をしていく気になりますよね。

一方、「この地域では将来ベッドの数が過剰になることが確実なので、お宅のベッドをつぶしてください」と言われても経営への影響もありますし、言うは易しで難しい問題です。

 

今後どうなるか注視が必要ですが、今まで長く指摘がされてきた医療機関の間の役割分担・連携という課題が、データに基づく改革でどのように進んでいくのか、気になりますね。