20代の社会保障のブログ

ニュースで見るけど難しくてよく分からない社会保障を少しだけ噛み砕いていくブログです。若者目線で綴っていきます。

書評:影響力の武器

年末から読んでいた本について、少しずつレビューを書いているものです。

今回は、アメリカの心理学者であるチャルディーニの「影響力の武器」です。

 

www.seishinshobo.co.jp

 

こちらは、自分の親から勧められて読んでいたのですが、身近な「あるある」な出来事から人の心理の説明を試みているものです。

結構、そうだよねとか、当たり前だよね、とか思うところもあるのですが、そのような「当たり前」を意識することで、自分や他の人に対する理解も深まると思います。

 

本の帯には、

・品薄な商品ほど、なぜかほしくなる

・欲しくもないのに高価な英会話の教材を注文してしまった

・上司のミスに気付いたのに指摘できなかった

お笑い番組は笑い声が入ったていた方が面白い

というようなことについて、経験ありませんか? と問いかけています。

 

この本ではそのような例示から始めて、どのように人の意思決定が決められているのかを説明していきます。

 

確かに僕たちの周りでは、ニュースがあふれていて、商品も多く、情報の取捨選択や判断するのが、難しいと感じるときがあります。

 

今日のご飯について何にしようかな、という些細なことでも、レシピなどの情報の収集、各レシピの情報の比較・評価、実際の買い物・調理、というような、プロセスがあって、「クックパッドで人気そうなやつはどれかな?」というように携帯で調べたりしますよね。

 

人間は、膨大な情報や選択肢の中からチョイスするためには、全ての選択肢を精査できませんし、ある程度、「みんながやっているから」とか、「前も同じようにやったし」とか、無意識のうちに、手を抜いて、判断を行っています。

 

それをカテゴライズしていくと、以下のようにいくつかのパターンに分かれ、これらの人間の心理的な性質が僕らの選択や判断に影響を与えていると言うのです。

 

1)返報性(ギブ&テイク)

 人は、他の人から何か恩義を受けたら、返さずにはいられない、という性質があります。これは、古来から人間は「持ちつ持たれつ」の関係で社会を構成してきたからかもしれません。

 

 これを返報性というのですが、「無料なものほど高いものはない」というように、デパートで試食したらなんかその場合を離れにくくなります。ほかには、女性はお金のかかる夜のデート代を負担してもらうと、その男性に対してお返しをしなければと思います。

 また、最近台湾で地震が起きた時、日本人として支援してあげたい、と多くの人が思ったのではないでしょうか。これも震災の時、台湾から支援があったからですよね。

 

 また、これを応用して、「まず相手に拒否させ、その後こちらが譲歩する」という交渉術を紹介しています。こちらが譲歩したら、相手の気持ちに返報性が働くので、相手側の譲歩を引き出しやすくなる、という方法です。

 

2)コミットメント

 人は、自分の言ったことや、やってきたことに対して、首尾一貫してようと思います。

 

 彼は例として、朝鮮戦争の捕虜となったアメリカ兵の話を挙げます。捕らえた中国側はアメリカ兵に対して、「思っていなくてもいいので、共産圏を賞賛するエッセイ」を書かせて、公表・表彰までしました。その結果、アメリカ兵の中にも、共産主義もそんなに悪くないのでは、と考えるようになったものが出てきて、捕虜を扱いやすくなりました。

 コミットメントは、行動を含むこと、公表されること、努力を要すること、自分の意志でやること、により強力に働くといいます。

 

 これを応用すると、ダイエットの目標とかも、公表して人と共有しておくと有効です。サッカーの本田圭佑選手もビッグマウスで有名ですが、「言った分には引き下がれない」と自らにハードルを課して、自分のパフォーマンスをあげるという戦略かもしれません。

 

 また、部活での新入生のしごき、というのも組織としてメリットがあります。「あれだけ大変だった『しごき』を耐えた!」ということでコミットメントが働き、組織への帰属意識が高まるのですね。

 

 僕はこの考えに感銘を受け、自分の今年の目標を紙に書いてきれいな額にいれましたTOEFL100点をとるとか、本を毎週一冊読むとかです。この記述自体もコミットメントです。

 

3)社会的証明

 続いては、人間は皆がやっていることに流される、ということです。

 

 この本で一番興味深かった例として、世界の終わりの日を予言するカルト集団の例があります。彼らのいう、世界の終わりの日には世界は終わらないと、集団は激しく動揺します。

 ですが意外なことに、予言が外れてから、集団は幻滅して解散するのではなく、信仰を強め、街に出て熱烈に人々に改宗を説くということです。

 

  信者たちはカルト集団のために、家族や仕事など多大な犠牲を払いました。後戻りはえきません。

 その教義が間違っていたとなると、とても耐えられそうにないので、信者は少しでも多くの人を改宗させ、「教義は事実として間違っていたけど、多くの人が信じている宗教である」という状況にもっていこうとしたのです。誰も改宗なぞしないと思うですが、信者たちに残された方法は、それしかなかったのですね。

 

 また、街で困っている人を見かけたときに、「誰かがあの人を助けてくれるだろう」と思ってスルーするということがありますよね。(僕はあります。)でも、街中に困っている人と自分の2人だけだったら、助けようと思うわけです。

 

 人は、特に自分と類似している人の行動に影響を受けます。同世代や同環境の人がどのように行動したのか。

 皆が受けている大学を受けるとか、先輩の多い会社に就職するとか、自分の人生の選択も多分にこれに影響を受けているな、と改めて思いました。

 

4)好意・権威

 人は、自分が好意を持っている人からの依頼には、イエスと答えます。

 

 例えば、できるビジネスマンは、おしゃれにも気をつかって、見た目的にも「できる」という雰囲気をだします。これは、ハロー効果といって、「『できる』ように見える人がいうことは正しいだろう」と人は考えるということです。

 

 さらに、自分との共通点がある人、自分をほめてくれる人、頻繁に現れて馴染みがある人にも好意を感じますので、セールストークをされても、「提案者の人柄」と「オファーの内容」についても切り離して、割り切って考える必要があります。

 

 また、一般に広告に素敵な女優さんを使うことがありますが、これは「連合」という効果で、「素敵な女優さん」⇒「好印象」⇒「女優さんが広告する商品も好印象」、と人が感じるのを狙ったものということです。

 おいしい料理を食べながら商談をすると、「おいしい料理」⇒「好印象」⇒「その席の場での提案も好印象」ということもあるということで、なるほど。。。と思いますよね。

 

 また、権威がありそうな人が言っていることは、正しいのだろう、と人は思ってしまいます。

 

 心理学の授業で聞いたことがある方もいるかと思いますが、著者はミルグラムの実験を紹介しています。

 これは被験者が、研究者風情の教師の指示に従い、どの程度まで他の者に電気ショックを与えるかを調べた実験です。

 電気ショックは実際には流れていないのですが、役者はもだえ苦しむ演技をします。被験者はそれを見て「やめてくれ」というのですが、教師が指示をし続けるので、電気ショックを与えるボタンを押し続けたというショッキングなものでした。

 ここからのインプリケーションとしては、全く理屈に合わないことでも、専門家とか権威(っぽく見える人)が言っていることについて、人は抗いにくいということです。

 

 かっこいい肩書をもっていたり、背が高く見えたり、政治家、医者、警察etc、、もちろん彼らがいっていることが間違いというつもりはありませんが。。

 

5)希少性

 最後は、「数量限定」といったように、人は機会を失いかけていると、それに価値があるように思います。

 

 僕たちは、「限定」ということで、「いつでも選択できる」という自由を失い、逆に自由を欲するという形で自由の喪失に対して反応します。

 ロミオとジュリエットの熱い恋愛も、親からの干渉により選択の自由が狭めらえたことにより、逆に燃え上がったのではないかというわけです。行動経済学では、損失曲線がありますがそのような話に似ていますよね。

 

 興味深かったことは、市民革命の担い手も、「一旦はよりよい生活を少なからず味わった人」が多いということです。彼らはその味わった生活水準を低下するような事態が生じた時に、革命に立ち上がります。例えば、アメリカの独立戦争はイギリスの課税、アメリカの公民権運動は第2次世界大戦後の黒人の経済的・社会的発展が足踏みしたこと、ソ連の崩壊はゴルバチョフにより一定程度認められていた自由が脅威にさらされたこと、などです。

 

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この本は、実社会にも使えそうなことや、行動経済学にも関係するようなことが整理されており、かなり満足のいくものでした。