20代の社会保障のブログ

ニュースで見るけど難しくてよく分からない社会保障を少しだけ噛み砕いていくブログです。若者目線で綴っていきます。

人口減少と社会保障

ちょっと前に発刊された山崎史郎さんの本を読みました。著者は、2000年から始まった介護保険の創設に尽力した、元厚生労働省の官僚の方です。


wwwchuko.co.jp

 

日本社会は、既に人口減少社会に突入しています。

人口統計とは、かなり信頼性が高いものでありますが、この人口減少という減少は少なくともこれから、恐らく僕らの世代が引退するまで続くような減少です。

 

日本の出生率は1.5弱ですが、人口減少にもならない水準は、2.1です。その水準に到達するまでは、少なくとも人口が減り続けることになります。

一方、出生率が仮に今すぐ2.1になったとしても、今生まれてくる赤ん坊が成人になり、社会の担い手となるのは、彼らが成人する20年後です。

そのため、人口問題については、かなりロングランで影響を及ぼしてくる、ジワジワと社会への影響がでてくるのですね。(将来のことを楽観的に考える性向がある人間については、なかなかやっかいな問題ですね。。)

 

著者は、人口減少は、「家族」と「雇用」の変化に影響を受けているといいます。

 

「家族」については、高度成長から人口が都市部に流入してきました。これは都市部の方が農村より生産性が高く、賃金が高かったからです。

流入してきた彼らは、核家族を形成し、サザエさん的な三世代同居がなくなり、人々は独立して過ごすようになり、家族の支え合う力というのが低下してきました。

 

「雇用」は、非正規労働者が増えることにより、特に若年層で将来への不安が高まりました。

 

この、「家族」と「雇用」の変化が相まって、晩婚化、未婚化が進み、その結果、出生率も低下してきたというのです。

 

人口減少といっても、何段階かあります。

高齢者が増え、若者は減る  ~2040まで

高齢者は横ばい、若者は減る ~2060まで

高齢者も、若者も減る    それ以降

 

このフェーズ毎に求められる施策は様々で、例えば、①の段階であれば、高齢者が増加するので、介護サービスなどを充実する必要があるでしょう。

一方、②については、これ以上サービスは増やす必要はありません。③では、もはや高齢者のニーズは減少していくので、それをどう縮小するのか、という話になります。

 

日本の中でも自治体によって、どのフェーズにいるかは様々です。

東京は、①の段階なので、あまり実感はありませんが、遅かれ早かれ③の段階に移行することになるので、今、③の段階にある自治体でどのようなことが起きているのか、むしろそこが先進地域なのではないかということです。

 

さて、このような人口減少の社会において、どのような対策が必要であると著者はいうのでしょうか。

 

一つは、シンプルで、少子化対策です。社会保障については、年金・医療・介護全ての面で、若年層が高齢期の方を支えるという構造になっています。そのため、社会保障・日本社会の今後を考える意味でも、少子化対策は必至です。

 

特に、日本は、子育てに関する支出が少ないと言われております。医療や介護は、社会保険方式であり、特に介護では、介護保険制度の創設以来、一気に介護サービスの基盤が充実しました。

 

これは、社会保険方式では国民に保険料を「納得もって」納めてもらう必要があり、この「納得」を得るためには、「いつでも必要になったら医療・介護が受けられるような体制にしておかねばならない」と皆が考えたからです。そのような誘因で介護サービスは現在、制度創設時に比べて3倍にもなっています。

 

一方で現在、子育て分野において、「こども保険」は存在せず、税金で賄われています。これについて、どのようにして、この財源を持ってくるかは今後の国の課題です。

税金は、その使途と結びついていませんが、社会保険料はその使途は、医療か介護かに決まっています。このことも、税の集金力がない要因かもしれませんね。

 

もう一つ著者が主張するのは、社会保障の縦割りな制度を、是正しようというものです。

 

社会保障制度は、医療や介護、それぞれの分野で整備されていますが、その範疇はそれぞれ決まっていて、縦割りに出来ています。その間の溝は、本人や家族のサポートで埋められてきました。

 

一方で、家族の支え合い機能が低下すると、介護をしながら育児もしている、障害を抱えている上で生活が苦しいとか、縦割りの支援だけでは対応できなくなるケースが増えています。

 

さらに、縦割りな制度では、専門分化が進みぎると、サービスを提供する側も人材難となります。

 

このようなことから、自治体によっては、介護や障害、子育てのサービスの相談窓口を一本化して、困ったことがあれば何でも相談できるような支援策が進められています。

これまで、専門分化が進められてきた社会保障制度についても、「よろず相談」というようなことに対応できるようになる必要があるのですね。

 

さらに著者は住宅施策の重要性も指摘します。

人口減少の中では、やはり人々がばらばらに住んでいるよりも、ある程度近くに住んでいる方が、効率的です。住宅施策については、あまり社会保障というイメージはありませんが、諸外国では「住宅手当」があり、日本でも必要になるのではないかと提言しています。

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僕の感想としては、著者の問題認識や今後の方向性については、現在の社会保障の改革の方向性と同一であり、なるほどよく整理されているなという印象を受けました。地域共生社会、というのは、分かったようで分からないという概念だと思いますが、この本はその理解を助けるものかと思います。

 

一方で、そもそも人間は、将来のことを楽観的に考えたり、将来のことは分かっているけど、現在行動しないというようなことが往々にしてあります。問題が発生してから対策が打たれますが、発生する前に解決することは本当に難しいですよね。特に政治の動きは短期に激しく動くので、ロングスパンで考えるというのが苦手です。

少子化ということについても大昔から問題視されていますが、何か劇的に変化したという感じもしませんし、、、人口減少社会の突入をきっかけに、色々な議論があればいいと思います。